成形用語集

射出成形の業界で使われる、専門用語の一部をご紹介します。

成形材料

熱硬化性樹脂熱を加えると硬化する樹脂。フェノール樹脂、エポキシ樹脂など。
熱可塑性樹脂熱を加えると流動し、成形が可能になる樹脂。多くの汎用プラ、エンプラがこちらに分類される。
汎用プラスチック耐熱温度100℃以下の比較的安価なプラスチック。
エンジニアリング
プラスチック
耐熱温度100℃以上の耐熱強化プラスチック。エンプラとも言う。汎用プラスチックに比べ、強度、弾性率などに優れ、金属に代わり使用される。目的に応じてガラス繊維やカーボン繊維などを添加し、耐久性をさらに向上させたものがある。
ABS樹脂3種類の原料からなる合成樹脂。剛性、耐衝撃性に優れた汎用プラスチック。耐候性が低く、紫外線で劣化する。
アクリル樹脂略称はPMMA。透明度が高く、耐候性の良さからガラスの代わりとして使われる汎用プラスチック。
ポリプロピレン略称はPP。低比重、低吸湿性、耐薬品性に優れる汎用プラスチック。再利用可能な容器等、様々な用途で使われる。
ポリアミド略称はPA。一般にナイロンと称されるエンジニアリングプラスチック。耐薬品性、耐衝撃性に優れ、ガラス繊維などの複合材による補強効果が高い。原料、分子構造の違いで様々な種類があり、ナイロン6(PA6)とナイロン66(PA66)が代表的である。PA66は、PA6に比べ結晶性に優れ、高融点、高弾性率で、吸水性が小さい。
ポリアセタール略称はPOM。デルリン(デュポン社)やジュラコン(ポリプラスチックス社)などに挙げられるエンジニアリングプラスチック。優れた機械特性、耐摩擦・磨耗特性から、軸受けやギア、カム等の機械機構部品として使用される。
ポリカーボネート略称はPC。唯一、透明性を持つエンジニアリングプラスチック。耐衝撃性、耐熱性、難燃性において優れ、また、吸湿、温度による寸法変化が小さい。
ポリウレタン樹脂略称はTPU。ゴム状の弾力を持つ熱可塑性エラストマー。耐熱性は無いが、身近な生活品から工業製品まで幅広く使用されている。

成形一般

射出成形プラスチックなどの樹脂を射出シリンダ内で溶融させ、スクリューにより金型内に圧入して成形する方法。金属の金型鋳造法と比較すると、低温で粘度が高い材料を高圧、高速で充填する必要がある。
予備乾燥成形材料が吸湿した水分を事前に加熱、乾燥させておく事を言う。シルバーストリーク(成形不良参照)による成形不良を防ぎ、成形品外観が改善される。
スプルー成形材料を金型内へ圧入する最初の経路、またはこの部分で固化した樹脂を指す。円錐の形状。
ランナースプルーに続き、成形材料を分配する経路、またはこの部分で固化した樹脂を指す。多数個取りの製品の場合は木の根のように枝分かれする。
ゲートランナーに続き、成形材料をキャビティに注入する経路、溶融樹脂の流動性を制御する部分だが、成形後の不要なランナー部と切り離しやすくする役目もある。
キャビティ金型内で成形品が成形される空間部分。成形材料はスプルー、ランナー、ゲートの順に充填されキャビティ内に流入する。
ガスベント成形中にキャビティ内で発生するガスや空気を逃がす金型内の溝。通常は製品を取出すエジェクタピンの穴で兼用される。
スラッグウェルスプルー底面やランナーのコーナーなどにつけられる出っ張り部。ノズル先端部に付着した固化しかけた樹脂(コールドスラッグ)や、溶融樹脂が金型内を流入する際に巻き込む油などの異物、これらを逃がすための樹脂溜まりである。
スラッグウェル(コールドスラッグウェル)により、流入樹脂先端部にある不良樹脂を取り除き、成形不良を防ぐ働きをする。
成形収縮成形品を金型から取り出し、24時間以内に起こる収縮の事。ヒケが発生したり寸法変化が起こるため、予め成形収縮を考慮した設計を行い、品質確認を成形収縮後に行う事が大事である。
射出圧力溶融樹脂を射出する際、スクリュー先端にかかる圧力の事。充填時の射出圧力(1次圧)は必要以上に力を加えないよう上限を設けそれを設定値とする。保持圧力(2次圧以降)の工程では、ヒケやボイド(成形不良参照)を抑制する効果がある。
射出速度溶融樹脂が金型内に射出される速度の事。スプルー、ランナーまでの充填時は速度を出しやすいが、ゲート部からキャビティ内にかけては圧力損失が大きく、充填圧力が高まり速度が低下しやすい。射出圧力を十分にとる事で高速充填が可能だが、ガスによる成形不良を起こす事がある。
FF制御東芝製電動射出成形機における制御方法の一つ。射出速度の立上がりおよび立下り応答が向上する。薄肉成形などで射出速度の立上がり応答の速さが製品の品質に左右する場合に効果がある。
オーバーシュート高速充填中にキャビティ内圧力損失により急激に内部抵抗が高まり、設定圧力を超えてしまう事。射出機が直ちに圧力制御を行い設定値に戻そうとする挙動が原因で、充填圧力と充填速度が波打ったような波形を示す。これにより成形品にバラつきが起こりうるため、オーバーシュート直前で射出速度を落とすなどの対処がされる。ゲート断面が極端に狭いピンゲートで発生しやすい。
FIT制御東芝製電動射出成形機における制御方法の一つ。成形不良の因子であるチェックリング締まりの応答変動や計量溶融樹脂の状態不均一に対し、射出工程中の仕事量が一定になるよう速度切替位置、圧力切替タイミングの自動補正を行う制御。製品重量の安定化に効果がある。
ふかし成形充填圧が射出圧力設定値に達し圧力制御となり、充填速度が速度設定値を下回る状態で成形される、低圧射出成形法。試作段階の射出試験において、過充填による金型の破損を防げる。また、射出波形により金型内の流動特性が判断できるが、射出速度が安定しない事から充填時間・保圧時間に変化が起き、成形品にバラつきが発生する。量産に当たっては、充填工程全域において射出速度制御を行い、ある程度余裕を持たせた射出圧力設定値をとり、射出毎の波形ブレの発生を充填圧側に振る事で成形品の精度を安定させた方が良い。
ラミナー制御東芝製電動射出成形機における制御方法の一つ。良成形品の射出波形を記憶しそれを元に速度制御を詳細に行い、製品の精度安定を目的とする。これにより射出速度、充填時間のばらつきを抑え、残留応力の低減、転写性向上、低圧成形に効果がある。ラミナーフロー(laminar flow)とは層流、不規則に変化することなく滑らかに流れる事を言い、乱流の対義語に当たる。充填圧のオーバーシュートやふかし成形における速度変化の波打ちは乱流(turbulent flow)と言える。

成形不良

ショートショット成形材料がキャビティに完全に充填されていない状態。計量が不足しているかノズルからの樹脂漏れによる材料不足が原因。または、充填圧力、充填速度の不足によりキャビティ内において成形品が完全な形状を形成する前に固化している。
ウェルドライン溶融樹脂がキャビティのピン等の周囲を回りこみ、合流する時にできるライン。樹脂温度、射出速度を上げて流動性を高める事で改善できる。ショートショットはウェルド部に起こる事が多い。
フローマーク溶融樹脂が固化しながら充填された流入の様子が、成形品の表面に模様となって残る状態。ウェルドライン同様、樹脂温度、射出速度を上げて対処する。
シンクマークヒケ、成形品の表面に生じたくぼみ。成形収縮が原因のため、樹脂温度を下げて外気との温度差を小さくしたり、保圧を上げて溶融樹脂を十分に圧入して対処する。
ボイド気泡、成形品の内部に生じた空洞を言う。ヒケと同様の成形収縮が、成形品内部に起きた場合にボイドとなる。成形材料の乾燥不足により水分が気化して混入する場合や、金型内で空気を巻き込んで発生する場合がある。
シルバーストリーク銀条とも言う。成形品の表面に現れる、溶融樹脂の流入経路に沿ったすじ状の模様を言う。エア混入が原因で、材料の乾燥不足により発生しやすい。
ブラックストリーク黒条とも言う。溶融樹脂が揮発して燃焼し、黒い点となって現れる。樹脂温度が高すぎたり、スクリュー内の滞留樹脂が原因となりやすい。
ガス焼け成形品の最終充填部分においてエア抜きが十分でない場合、溶融樹脂の流入によりキャビティ内の空気が急速に断熱圧縮され、揮発して焼けしまう現象。ガスベントを掃除し、低速射出でエア抜きを十分に行う事で対処できる。
バリ金型のパーティングラインなどに溶融材料が入り込み、成形品の外側についてしまう薄片状の材料。計量が多すぎたり樹脂温度が高い事や、射出条件(高圧、高速)による充填過多が原因。
反り・歪み内部応力による成形収縮で起こる変形。成形品の形状に起因している場合が多い。樹脂温度を下げ、冷却時間を長くとる事で軽減できる。
ジェッティング溶融樹脂がゲート部からキャビティ内に飛び込んだ際の蛇状の模様が、成形品の表面に残ってしまう不良。ゲート部の充填速度を遅く、樹脂、金型温度を上げて融合を良くすると効果的、ゲートの位置や形状を見直すとさらによい。
ヘジテーションマーク多点取り成形品の充填工程において、スプルーに近いキャビティの充填中に圧力損失が大きくなり充填が一旦停止、先に外側のキャビティから完全充填し圧力が高まった段階で、停止していた樹脂が再び流れ充填が完了する。この時の冷却ムラが成形品表面に現れた状態を言う。ランナーへの充填を先に完了させるための低速充填から、キャビティに向けて一気に加速するなど、速度制御の工夫で改善される。